昨日は「はたらく馬フェス」というイベントに行ってきました。主に農業、林業などで活躍する馬たちを間近で見ることができるイベントだったわけですが、特に私が見たかったのが「馬搬(ばはん)」といわれるもの。
馬搬(ばはん)とは、山で伐採した木材を馬に曳かせて搬出することをいいます。昔は一般的だった馬搬ですが、馬の活躍の場は重機に取って代わられていきました。重機の場合には木材を搬出するためにまず運ぶための道を作る・・・すなわち山を削る必要がありますが、馬搬ではその必要がなく、CO2も出ないため環境にやさしいと言えます。
正直に告白すると、私は馬搬というものを自分の目で見てみたかっただけで、環境問題云々というところまで頭がまわっていなかったのですが、馬フェスに参加したことでそういう側面も知ることができました。(なんだか小学生みたいな感想で申し訳ないです。)
さて、前置きが長くなりましたが、実際に馬フェスで行われた馬搬デモンストレーションの様子をお伝えできればと思います。
※撮影は事前に許可をいただいて行っております。
まず、ご紹介するのはこの日「馬搬」のデモンストレーションをやってくれたヤマト君10歳(牡馬)。真横にいるわたしが162㎝なのでなんとなく体格の良さがわかると思います。北海道のばんえい競馬から馬搬のお仕事に転職してきたばん馬だそうです。
脚の太さもこの通り!立派です。
馬搬のための道具を装着します。首回りにまかれている馬具(ハモ)が一番重要な道具。なんだか凛々しくみえますね。
足腰は本当に強そう…!
足には馬搬用の蹄鉄をつけています。普通の蹄鉄と違うところは斜面でも滑らないように4か所にポイント(スパイクのようなものでしょうか?)があるところ。
後ろにソリのようなものをつけます。これに丸太をつなぐんですね。方法はいくつかあって、山の状況や運ぶ木材に合わせてノウハウのある技術者が選択します。馬搬のプロフェッショナル(技術者)のことは馬方(うまかた)と呼ぶそうです。ちなみに人間と馬がそれぞれ成長するために「ベテラン馬×ビギナーの人間」または「ベテランの人間×ビギナー馬」の組み合わせで仕事をすることもあるんだとか。
実際の馬搬の様子(動画)です。一歩一歩がもっとゆっくりで、すごく時間がかかるイメージでしたが思いのほか速いスピードで驚いてしまいました。(故に静止画の方はちょっとボケ気味です…)
馬はさくっとと丸太を運んでいましたが、これを人力でやろうとすると10人がかりで馬の2倍以上の時間がかかるとのこと。
色々とお話しをしてくださった馬方さんは、とても山を大切にしている山のオーナーから「(馬搬の)プロは(木材搬出の)痕跡を残すな」と言われたことがあり、それをモットーにお仕事をされてるそうです。実際に馬搬の跡は数ヶ月で跡形もなくなります。
馬のトレーニングは気質のよい馬であれば1カ月程度で仕事に出られるようになるのですが、馬の仕事にもレベルがあり、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれたヤマト君もこれからもっと経験を積んでいけばさらに良い仕事ができるようになるそうです。
また、馬齢によって筋肉の付き方も違ってきますから、運べる木材の量も変わってきます。10歳(ヤマト君の年齢)はちょうど働き盛り。
日本では数が少なくなってしまった馬搬。
イギリスでは20年以上前に馬搬の技術伝承と復活運動がはじまり、現在ではチャールズ皇太子が後援についたり、モーガン社(クラシックスポーツカーメーカー)がスポンサーになるなどの盛り返しを見せています。
日本でも先日、都知事の定例記者会見で「馬搬」や「馬耕」について言及される場面がありました。もしかすると、日本でもこれから環境問題を考えていくうえで馬搬は注目されていくかもしれませんね。
★BALOG★